2代目創業43年 看板屋の若社長です。

私は創業４３年の小さな看板屋の２代目。
先代の、つまり親父のあとを継いで今年で５年目になります。
親父の後を継ぐ前からもう大分業績は落ちて来ていたんですけれど、
最近特に酷くて、それが目下の私の悩みのタネです。
古くから付き合いのある同業者さんも同じように売り上げ減に悩んでいると聞きます。

親父が、ここからは会長と書きますが、会長が４３年前に会社を興した頃はそれはそれは景気が良くて、
飲食店関係関係の仕事や役所、工事関係の仕事で毎日のように残業していました。
忙しい時にはアルバイトを使ったり、同業者に手伝ってもらったりして乗り切っていました。

会長が会社を興した頃は、たった一人で切り盛りしていて、所謂一人親方というやつで、
営業も看板の枠を作るのも描くのも、出来上がって取り付けに行くのも全部一人でやっていました。
その頃はまだトラックなんか持ってなくて、家族も乗れる自家用車にもなるライトバンに
大工道具やらペンキやらを積み込んで、
ルーフキャリアに梯子と看板を結わえて出かけていく姿を私もよく覚えています。

私が大学を出て家を離れて、サラリーマンやっていた頃も繁盛していて、
その頃はもう今いる二人の従業員さんは働いてたんですけど、
たまにおふくろの飯が食べたくなって晩飯を食べに実家に寄ったりすると、
会長は「はい、今日もお疲れさん」と二人を返してからも一人で看板を描いてました。
そのくらい仕事があったんです。

ちょうどバブルの頃でもあったので、街でデカいイベントがあったりして、
そのイベント会場の仕事がどっさり入ってきたり、
ウチに仕事を依頼してくれていた会社も景気が良かった時期でしたから、
もう年間行事みたいなのが決まっていて、だまっていても仕事が入って来てたみたいでした。

でもバブルが終わり、気が付いてみたらお客さん達の動きがドンドン少なくなって、
セールやイベントも無くなるし、クリスマスや正月に看板を上げる商店も減る一方。
一杯飲んだ会長がたまに私に電話してくると決まって、
「商売なんかやるもんじゃない。最近はウチの店が潰れる夢ばっかり見る」
と愚痴っていたもんです。

で、丁度その頃、「会長が持病のギックリ腰を悪化させて、もう前みたいに働けなくなった」と
お袋から電話がありました。
当時私が勤めていた会社も不景気のあおりで傾きかけていたし、
会長がそんな様子なら、この際だから長男である自分が店を継ごうと。
一生懸命働いて私を大学にまで行かせてくれた会長の為に、私が一肌脱ごうじゃないかと。
そんな意気込みで会社を継いで早くも５年が経つんですが…。

売り上げが悪いのを景気のせいにはしたくないんですが、やっぱり声がかからなくなったのは現実です。
官庁関係や企業でも、経費節減で真っ先に削るのは看板や広告関係じゃないですか。
今じゃ皆さん自分で大型プリンターを用意して、
パソコンにデータを打ち込んで、自分で看板を作っちゃう時代になりました。
それに太刀打ちできる専門性とデザインセンスで集客できるはずなので、
ではどうすればいいのかを考えているところなんですが、なかなかいい考えが浮かばなくて…